2013年11月27日水曜日

土の塔

会期が終わったら写真を載せると言っていた里山アート展の作品、
とっくに終わっていたのにすっかり忘れていました。
せっかくですので全ての制作工程をまとめて記載しようと思います。

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最初に繭をモチーフに僕が提案したのはこの小さな模型です。
これをどう作るか悩んでくれたのが今回の共同制作者である元左官屋さん(以後親方)です。
そもそも彼と共同で作れると決まったことからこの土の建物を考えました。
数年前に引退していた彼は当初本業と同じような左官作業をすることを嫌がっていました。
しかし僕はどうしてもその道のプロの本気が見たくて半ば強引に話を進めてしまいました。

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まずは友人たちの力を借りて巨大な一本柱を立てました。
地中に1.5m程埋まっているので7m以上はあったでしょうか。
これを人力で立てるだけでも肉体は勿論、大変な心のテンションと技術が要ります。

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その柱を軸に荒れた竹やぶから間引いてきた竹で形を作っていきます。

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格子状に組んで補強したところまでが去年の作業でした。
そして今年、雪が溶けた春頃から何度も通って親方と二人で下塗りをしました。

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下塗りを終えた8月初旬、いよいよ上塗りです。
上塗りは下塗りと違い一気に1日で仕上げなければならないのでしっかりと準備します。

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材料は珪藻土や砂、藁などの天然素材に少しだけセメントを混ぜます。
本当は伝統的な工法の土壁に仕上げたかったのですがここは豪雪地帯です。
耐久性や安全性等の大人の事情でセメントを使わざるを得ませんでした。
全ての材料を混ぜて準備しておき、さらに親方に存分にコテを振ってもらうために
手伝ってくれた友人たちと完全に役割を決めて作業シュミレ-ションしました。

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ひたすら材料と水を混ぜる人、出来たそのネタをバケツでひたすら運び届ける人、
僕はネタを受け取ってはしごの上で親方の手元に次々補給する役でした。
ちょうどわんこそばのような要領です。

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平素危険なことが大嫌いな僕ですが制作では致し方ありません。
形状が特殊なので足場も作れず2本のハシゴだけで作業しました。

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今年で75歳、本気の親方の姿は美しく度々見とれてしまいます。
酷暑の中、不休での作業でしたがシュミレーションの甲斐もあって昼過ぎには終わりました。

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みんな汗と泥と疲れでボロボロ、しかし見事な仕上がりです。
親方は簡単そうに塗っていましたがこのスピードと仕上がりは常人ではありません。
まだまだ十分現役でいけると思いますがご本人は相当大変だったのか
「もう一度同じことやれって言われても絶対にやらない」と言っていました。

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内部は小窓から入る光が美しく異空間を作ってくれています。
都会から来る人たちがここでリセットして再び都会に舞い戻るための繭になればと願います。
永久設置ですので皆様も是非いつか訪れてみてください。

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2013年11月14日木曜日

タイトル板

急に冬の寒さがやってきましたね。
我が家の庭は今朝初霜が降りました。

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あっという間に秋が過ぎ去ってしまって、ゆっくり物思いに耽る間もありませんでした。

そんな中今日ひたちなか市のモニュメントにタイトル板を設置してきました。

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友人の書道家、竹内利映さんに書いてもらいました。
彼女の運営するサイトです。
http://wamoji.ocnk.net/
原書はもっともっといいのですがステンレス板にブラスト加工するとこのくらいが限界です。
それでもモニュメントの意図を良く理解してくれた素晴らしい文字だと思っています。

朝は辛かった冬の寒さですが、高い空と澄んだ空気は作品への映り込みを綺麗にしてくれます。

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景色との境界線は立ち昇る熱に光が屈折して出来たように見えないでしょうか?
作者の勝手な思い込みでしょうか?

2013年10月19日土曜日

ルーマニアの友、再び

つい先日までルーマニア人の友人が個展のために来日していました。

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彼は2年前にも宇部の彫刻コンクールのために日本に来たことのある古い友人です。
その時のブログです。

http://terramono.seesaa.net/article/226768374.html
http://terramono.seesaa.net/article/227348835.html

慣れたもので箸を振り回しながら話すようになりました。

僕の予定ではステンレスモニュメントも終わっていて
彼を迎えたら一緒に旅行でもしようかと考えていたのですが
1ヶ月も遅れてしまったので全ては泡と消えました。
彼は到着早々、長旅で疲れているにもかかわらず僕の仕事を手伝ってくれました。

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さすがに初日は時差ボケで、途中耳栓して作業台の上で寝てましたが、

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大きな機械音の中よくも眠れるものだと感心しました。
その後彼の個展が始まるまでの4~5日間ずっと茨城で僕の手伝いです。
観光もしたかったでしょうに、文句も言わずに付き合ってくれて感謝に絶えません。

彼の個展では逆に僕が全力でサポートしました。

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作品輸入でトラブルはありましたが何とか大成功で終わることができました。

その間に僕のモニュメントも無事設置を終えて
帰国前夜は2人で静かな打ち上げをして語り合いました。(最初の写真)
お互い全力で助け合って乗り越えた難局でしたがそれは
「友達だから助け合う」とか「自分もしてもらったからお返しに」とか、
そういうことも無くはありませんがちょっと違う気がします。
自分と同じような意識を持って制作し続けている人間を応援したい、
彫刻界全体にとって良いことだと信じるから尽力したいと望むのだと思います。
他人を妬みながら優劣を競い合うだけがライバルではありません。
良いものを発信するために時にはこうして手を組んでいくことも大事だなーと感じます。


2013年10月10日木曜日

第10回里山アート展

今年でとうとう10年目になる新潟県豊実でのアート展です。

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僕は第3回から参加しているので8回目になります。
この展覧会はなんと言いましょうか、真剣に遊ぶ大人たちのアート展です。
こんなものがあったらいいな、こんなふうにしてみたいなということを
大勢の大人たちが本気で知恵を出し合って実現させる場所です。
勿論しっかりとしたテーマを持ち、意義を考えながらです。

今年の僕は以前から書いていました左官の親方との共作を完成させています。
写真は閉会する11月13日まで載せません。
是非現地で沢山の作品と真剣に遊ぶ大人たちを見てきてください。

2013年10月5日土曜日

モニュメント完成

2ヶ月近くご無沙汰しておりました。
4月から取り組んでいましたステンレスモニュメントがようやく完成いたしました。

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過去にも大きな作品を作らせていただいている月島倉庫さんの新倉庫入口です。
設置の日は雨でリスクもありましたが早く収めたい一心で強行しました。

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初めてのステンレス作品は全ての工程でつまずき、考え、実験しながらの制作でした。
全く思っていたようにはいかず「3歩あるいて2~4歩さがる」日々。
しかし反省といらだちの中で得たものは多いです。
かけがえのない経験と忍耐力、そして信頼できる人々。
無数の火傷と切り傷、全身の痛み、
長い戦いで深くなった眉間のシワなども付いてきましたが
終わってしまえば全ては良かったことです。

タイトルは「昇炎」、造語ですがカゲロウと読みます。
音もなく淡々と、しかし強烈なエネルギーで立ち昇る熱を表現しました。
四角い倉庫に人間の手による曲線の形態は強いコントラストを産みます。
見る人が熱くなれるようなモニュメントになって欲しいと祈ります。

場所はこちら

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お近くに行かれる方は是非ついでに寄ってください。

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2013年8月18日日曜日

後半戦

日韓展前半が終了しました。
今までお越しくださった方、ありがとうございます。
特に初日はたくさんの方々においでいただき盛り上がりました。

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会期はまだまだ、24日までありますので皆様是非お越しください。
作品はご覧のように多種多様です。

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表現や素材、技法の違いもお楽しみいただけると思います。
ちなみに僕の出品作①です。

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よろしくお願いします。

2013年8月1日木曜日

日韓交流展2013

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昨年はソウルで開催したこの展覧会、
今年は入谷にオープンしたばかりの「いりや画廊」さんで開催されます。
��月12日からです。
よろしくお願いします。

2013年7月10日水曜日

ステンレスモニュメント

ひと月以上も更新していませんでした。
現在、全てを忘れて5mのステンレスモニュメントを製作中です。

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写真は4分割した一番下のパーツです。

人生初のステンレスモニュメント。
サイズも形状も困難で色々な方から無理だ無理だと言われています。
思ったように出来ないかもしれませんし失敗して借金を抱えるかもしれません。
でもやる前からスケールダウンや素材変更の妥協案を考えたくありません。
リスクがあるから本気で悩み、前進できるものと思っています。

精神的にも肉体的にもハードな上にこの暑さは堪えます。
そんな時毎年お世話になっているのが庭で採れた梅の実です。

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これを氷砂糖とつけて1週間、
梅のエキスたっぷりのシロップを少量の塩と共に水で薄めて冷やします。
脱水と疲労でフラフラなときには
どんなスポーツドリンクよりも効くと信じて飲み続けています。
我が家の梅の木に感謝です。

2013年7月9日火曜日