2018年8月29日水曜日

阿倍野のお墓

富田林からの帰り、乗り換えで天王寺に降りたので寄り道しました。
6年前依頼をいただき制作したお墓が阿倍野区の西念寺にあります。
設置以来来ていなかったのでお盆ということもありお参りすることにしました。


周りのお墓からすると異様なデザインで普通お寺では許されないことが多いのですが
こちらのご住職は理解のある方で何とかお許しをいただきました。
ミャンマーで亡くなった叔父様を弔うお墓ということで
白い石にパゴタというミャンマー様式の仏塔をレリーフしてあります。


イタリア産の白トラバーチン、多孔質の大理石を使いました。
時間と共に石の表情が出てきて更に水垢も付くので
どんどん良くなるだろうと思っていた通りになってくれていました。
工場で竿石にはめ込んだばかりの時はこんな色でした。


磨いた御影石は何年経っても変わらず光り続けて
それはそれで魅力なのですが時と共に変化していく美しさもあります。
悪く言えば風化、でもそれは確実に積み重なる時間という要素の現れです。
特にお墓は維持していく人の思いや手跡が乗って次世代へ継がれていくものです。
象徴として一部分だけ、あえて雨風に弱い大理石を使わせてもらいました。
それから6年でこの変化です。
作者としても10年後20年後どうなってるかが楽しみです。

2018年8月26日日曜日

大阪、ある彫刻を訪ねて

ここ数日また暑さが戻ってきていますが今年のお盆は暑かったですね。
お盆はどこも混むので普段はあまり出かけないのですが
今年は京都の鞍馬で川床料理のご招待をいただき行ってきました。


その日も京都は猛暑でしたが流石に川の水面すぐに設置された床は涼しく
日が暮れると肌寒さすら感じるほどでした。
美味しいお料理とお酒、京都の人はなんて風流なことを考えるのかと感じ入ります。

せっかくの関西ですので翌日一人大阪に移り
前々から行きたかったPL教団の聖地を訪れました。


この塔、ご存知の方もいるかもしれません。
富田林市の教団聖地内にある大平和記念塔です。
前教祖が自ら模型を作られたそうですが度肝を抜くほどの大きさです。
PL学園と言ったほうが全国的に知名度があると思います。
正式名称をパーフェクトリバティー教団と言いここ富田林市の広大な土地に
本部や聖地、学校や病院など主要施設が集まっています。
過去にはPLランドという遊園地まであり
今でも続く花火芸術祭は町の風物詩になっています。
何をするにもスケールが大きくて驚きます。
「人生は芸術である」という教団の理念を感じ、共感するところです。

さて、今回の僕の目的はそれらの物ではなく
この記念塔周囲に置かれた彫刻群を見るために訪れました。


おおむね3mくらい、このような石の彫刻が13個設置されています。
それらはすべて1963年、日本で初めて開催された石彫シンポジウムにおいて作られたものです。
翌年の東京オリンピック時に代々木競技場に彫刻作品を飾るべく
国内外から当時の主要な石彫家を招待し公開制作するという一大プロジェクトでした。
神奈川県産の小松石を用いて採石場のある真鶴半島道無海岸で制作は始まりました。

 
 
石碑には参加者のサインの上に「世界近代彫刻シンポジウム」と彫られています。
日本における最初の彫刻シンポジウムです。
その後の日本彫刻界に大きな影響を残した歴史的なイベントでした。
そこで作られた作品は予定通り翌年のオリンピック競技場に飾られ
その後なぜだか全作品がここPL教団に設置されて今に至っています。
もう当時のことを知る人はいないのではっきりとした経緯はわかりませんが
この石碑の裏に彫られた宣言を見て僕は何か腑に落ちました。
 
 
「彫刻はいずれの國 時代を問わず共同社會と自然と協同したとき偉大であった。
 彫刻のこの祖形を自然の中で回復するためにわれわれは集まり制作することをここに宣言する」
「人生は芸術である」と言った先代教祖はこの言葉に共感し
石碑ごとすべてを購入したのではないかと想像します。
今の時代にはなかなかいないスケールの大きな人たちの熱い思いを感じ帰路につきました。